M60
長谷川 学
2015.03.27 金 – 04.25 土

2000年に多摩美術大学美術学部版画専攻を卒業した長谷川学(はせがわ・まなぶ)は、東京を中心に作品発表を続けてきました。2001年「キリンアートアワード2001」にて準優秀作品賞を受賞、2010年「第13回岡本太郎現代芸術賞」にて特別賞を受賞、2012年には「SOFA NY」にて最優秀作品賞を受賞するなど、国内外から注目を集める作家です。
長谷川の作品はドローイングと立体作品を掛け合わせたスタイルで、鉛筆のトーンと支持体となる紙の造形によって作り上げられます。近年は銃器やナイフなど、重厚感のあるモチーフを作品にしている長谷川ですが、それらが”鉛筆と紙”という脆く儚い素材によって支えられているという事実が、作品に強いコントラストを生み出していると言えます。

長谷川が作品を制作してきた背景には宗教からの影響が強くあります。当時、長谷川は様々な宗教観にふれていく中で、仏教と神道という相反する要素が同居した「平家物語」に出会います。異なる思想が混ざり合うことなく、陰陽となり大きな視点となって描かれた「平家物語」の世界観に感銘を受けた長谷川は、次第に自身のアイデンティティーと制作行為を重ねるようになります。

冒頭の一節にある「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり…」という謳には、いかに圧倒的な武力や権力を誇ろうとも時の流れには逆らえず、一方の夢のようにいつかは消え去ってしまうという、この世の無常観や日本人として美意識が込められています。現代においても、世界の有り様や個々人の行いを絶対的なものとして定義する事は困難であり、時の移ろいと共に、その姿カタチも変化しながら、儚く消え去ってしまうものであると言えるのかもしれません。

「平家物語」が多くの人々によって語り継がれてきたように、長谷川もまた自身の制作行為を重ねながら、そこで描かれている世界観や、日本人として潜在的に持って生まれた美意識、現代にも共通して言えるある種の無常観を、作品を介して表現しようとしています。