ピントとフォーカス

ピントとフォーカス

安田知司

2024.9.20 Fri - 2024.10.19 Sat

2024920()よりTEZUKAYAMA GALLERYでは初の安田知司個展「ピントとフォーカス」を開催いたします。

1985年北海道生まれ。2008年に京都嵯峨芸術大学(現・嵯峨美術大学)芸術学部造形学科油画分野卒業。

認識の揺らぎが起こるまでピクセル化させたデジタル画像を元に作品を制作します。

ピクセル数にあわせてマス目状に区切られたキャンバス。全てのマスは微妙な差異があり、注意深くひとつひとつ色合わせを行い絵具を乗せていく作業は、全体を想像しながら描く過程とは違い、ただ静かに絵具という物質と向き合う工程となります。最後のひとマスが埋まり、手から作品が離れた時にようやく作家は全体像を知ることができるのです。

安田は「色合わせを行うことでそれぞれの色に対して多くの情報量を持つようになる」といいます。

しかし、遠く離れて作品を見ることでその色たちは意識の中で混じり合い、一つの具象画となっていきます。

遠くにあるからこそ理解できるものが、近づくことでその情報量に圧倒されてしまうという事柄は鑑賞者である私たちにも身に覚えがある感覚ではないでしょうか。

本展覧会ではピクセルシリーズをおよそ15点出展いたします。この機会にどうぞご高覧くださいますようお願い申し上げます。

 

[アーティストステートメント]

一度だけ函館の夜景を見たことがあり、その風景がとても綺麗だった。

何万もの光の粒が目の前で広がっていて、人がいない海や山には光はほとんどない。

一つの光に誰かの生活があり思いを馳せる。

高速道路の街灯やその下を動いていくヘッドライトの灯りや、縦に連なった無数の光は輪郭は見えないけど、オフィスビルかマンションだとわかる。

その中のどれかひとつの灯りが消えることなどがあれば、一瞬でも誰かと繋がれたような感覚になれると思いしばらく眺めてみる。

そしてふと夜景全体に目を戻す。

想像を巡らせた時間が何万もの光の粒の数だけあると思うと理解が追いつかなくなり、何を捉えていいかが一瞬分からなくなる。

だから考えながら見るのはやめてただ眺めるようにする。

それからまた目の前の風景を「夜景」として受け入れられるようになると、さっきまで見ていたことが意識下に沈んでいく。