HOPE

HOPE

野田万里子

2013.11.23 Sat-2013.12.21 Sat

この度、テヅカヤマギャラリーでは約3年半ぶりとなる野田万里子の個展「HOPE」を開催いたします。
野田は1985年に佐賀県に生まれ、2009年京都市立芸術大学美術学部美術科油画専攻を卒業後、現在に至るまで、平面にとらわれずあらゆるメディアを用いた作品を制作、発表し続けてきました。様々な形式で語りかけてくる野田の作品は一見明るく柔らかですが、その中には、残酷さや妖艶さという、対極の感情がひそんでいます。

2012 年奈良で開催された芸術祭「奈良・町家の芸術祭 HANARART」では、元遊郭である「旧川本邸」において新進気鋭の若手作家たちと共にグループ展に参加しました。窓辺に展示されたそれぞれのカラフルな水と魚の鱗が入った瓶が並べられた作品、「locked them in the glass (2012)」では、自由を奪われた遊女たちの美しくも悲しい日常を表現しました。
また、今年5月台湾で開催されたホテルアートフェア「YOUNG ART TAIPEI」では、既に発表された、ある単位構成された文字列を繰り返し描いた平面シリーズ「1+1=0」等を、部屋一面に数十点と展示する事により、 インスタレーション作品として昇華させました。一見、ポップでカラフルな絵画作品に見えますが、近くでみるとそこには、ペンで緻密に何度も書かれた、執念にも似た野田の想いが見てとれる作品です。

野田が今回の個展でテーマにしたのは「死・詩」。以前より死と向き合う機会が多かったと語る彼女にとって、本展は、常に明確なコンセプトの上に作品を制作してきた彼女の思考の集大成であると言えます。野田が伝えたいものは、苦しく悲しい死のイメージではなく、「死」の周りにある人間のすばらしい感情と、彼女の人間に対する望みです。新作は、その想いを詩を綴るように表現した大型の平面作品と大胆なインスタレーション作品として発表いたします。3年半の時を経て野田が作り出す独特の世界観に、是非ご期待ください。

アーティストステートメント

私は幼いころから死と向き合う機会が多く、その度に人間とは何だろう、どうして人間同士で傷つけあったりするのだろうと思っておりました。

高校生のころ、最も親しい友人の手首には自傷行為の痕が痛々しく残っていました。その時まで、自分の身の周りに自傷をする人がいなかった私はひどく狼狽し、しばらくはそれについて触れられずにいました。 ある日思い切って、どうしてそういうことをしてるの?と尋ねたら、彼女は隠しもせず、「すっとするの。」 と応えました。私はその時に彼女の中の底知れない孤独と悲しさを感じ、でもなお何も出来ない自分の無力さをもどかしく思いました。

私はその時からずっと彼女に何かを伝えたくて作品をつくり続けているのかも知れません。彼女の気持ちをどうにか理解したくて。

それから年月がたち、その間もさまざまな痛ましい思い、自分の無力さを感じる機会がたくさんありました。 日本では東日本大震災が起こり、甚大な死傷者、被害が出ました。私は東日本大震災をきっかけとして、世界で起こっている人間の起こした様々な戦争、事件を調べました。私に必要なことだと思ったからです。 世界は私の想像を絶しました。今住んでいるこの日本も悲しい痛ましいことが多くありました。それも人間が起こしたことです。それと同時に、人間が極限状態でこれほどすばらしい行いができるのかと、驚くようなこともたくさんありました。それもまた、人間の行いです。

普段生活しているとなかなか見えないことに焦点をあてて、この空間では人間のすばらしさ、かなしさを考えていただければと思っております。

私の作品は人間への祈り、人間を信じたいという意思で制作いたします。

野田 万里子