Main Gallery
LIFE
ノモトヒロヒト
2012.2.3. Fri-2012.2.25. Sat
このたび、テヅカヤマギャラリーでは、大阪在住のフォトグラファー ノモトヒロヒト( nomoto piropiro改め )による写真展 LIFE(ライフ)を開催致します。
世界中に大きな衝撃を与えた東日本大震災の発生から数週間後、ノモトヒロヒトは、被災地、特に津波の被害が大きかった地域を訪れ、2つの写真シリーズに取り組みました。
ひとつはFacade。Facade =ファサードとは建築用語で建物の正面、あるいはそのデザインを意味します。ノモトは、周囲の建物が押し流された中に残った住宅、店舗、学校や倉庫のファサードを、まるで建築写真家が完成したばかりの新しいビルを撮影するかのように客観的に記録しています。特殊なレンズを用い、完全な真正面の姿をとらえたこの作品群の中では、建築物の構造的な秩序が強調され、その機能やデザイン、そしてその置かれた状況を細部まで観察することができます。
もうひとつのシリーズ“Debris”においてノモトは、被災地で大量に発生し、それぞれの素材によって分類、集積されたガレキ(Debris)を被写体に選びました。高画素のデジタル機材で撮影した複数の画像を、コンピュータ上でパッチワークのように貼り合わせ、数億のピクセルで成り立つ、ひとつの超高画素なイメージを完成させます。大画面にプリントされ、まるで抽象絵画のようにも見えるこの作品では、山となったガレキひとつひとつのディテールが、膨大な数の画素による圧倒的な情報量で目の前に再現されています。
これらふたつの写真シリーズに通底するのは、被写体となる事象から距離を置き、あくまで冷静な観察者に徹するノモトの視点です。あえて災害の悲劇的な側面を排除し、物理的な事実のみを淡々と描写すること。そして、巨大な現実を巨大なままとらえるのではなく、個々の細部をより深く掘り下げること。それこそが、あの日起こった現象そのものをリアルに伝える最良の方法である、とノモトは言います。
現在、被写体となった建物やガレキの多くが撤去されており、被災地は復興に向けた新たな段階に入っています。ノモトは”災害現場の写真”というタイムリーでエモーショナルな題材を、普遍性を持ったアートワークへと昇華させ、災害によって失われた人間の営み=LIFE を永遠に記憶されるべきものとして我々に提示しているのです。
*本展は、2012年1月中旬にシンガポールにて開催予定の Art Stage Singapore にて発表される作品を中心に構成されます。また、売り上げの一部は被災地域で活動するボランティア団体へ寄付されます。