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真珠星
後藤靖香
2020.11.13 Fri - 2020.12.12 Sat
この度、TEZUKAYAMA GALLERYでは後藤靖香の個展「真珠星」を開催する運びとなりました。
後藤は幼少期より祖父や大叔父の戦争体験を聞いて育ったことから、戦争に組み込まれていった無名の若者たちの葛藤や内面の苦しみ、公の歴史では記されてこなかったエピソードを丹念に調査し、劇画調の画風で大画面のキャンバスに表すスタイルで高い評価を得ています。また、近年は作品が展示される場所に応じて、当時その場所で働いていた人々の営みをテーマとした作品も手掛けています。共通して言えるのは、その時代をたくましく生きようとした後藤と同世代の若者達の姿を描く事にあります。また、壁を覆い尽くすほどの画面に大胆な構図で描かれた後藤の作品は、その圧倒的な存在感と迫り来るかのような力強い筆跡から鑑賞者の記憶に強く残ります。
2011年、大阪名村造船所跡地にて発表された「床書キ原寸」では、当時造船所として使われていた広大なスペースを舞台に、全長10mの作品を2点のみ展示するという想像を超えたスケール感の展示を見事に成功させ、翌年の「さくやこのはな賞」と「絹谷幸二賞」を受賞します。また、2016年には六本木クロッシングに招待作家として参加するなど、近年その活動に注目が集まっています。
前回の個展から約5年ぶりとなる今展では、古今東西の星座・星名の調査をはじめ、星の和名の収集研究に尽力したことで知られる天文民俗学者の野尻抱影(のじりほうえい/1885-1977)をテーマに約20mに及ぶ大型のペインティング作品を中心に新作を多数発表いたします。是非、この機会にご高覧賜りますよう、お願い申し上げます。
[アーティスト・ステートメント]
ふと夜空を見上げた時、ひときわ輝く星が私の目に止まった。 調べたらそれはスピカという星で、和名を「真珠星」という。
ロマンティックな名前に惹かれ、真珠星に関することを描こうと調査を始めたが、 日本に神話や伝承はないらしく、わかったことは抱影という人物がつけた新しい名前ということぐらい。
何を描くか迷いも生じたが、抱影という人物を追い続けることにした。 抱影は星にまつわる研究をし、嘉内や賢治に影響を与えたと言われる人物。
彼の周辺に現れる人物たちは繋がっている様で皆、離れ離れだった。 まるで重力で強く引き付け合うが故に遠ざかっていく銀河の星々の様だ。
いつもなら私は対象者と一体化してしまいそうな程、近付き描こうとする。 だが、今回は彼らの切なくなるほど遠く長い隔たりを私は無視できなくなり、遠い彼らのおぼろげな姿や関係性を遠いままの距離感で描 こうと決めた。
後藤靖香