NEOLOGISM 21714-21743

NEOLOGISM 21714-21743

西本剛己

2021.03.26 Fri - 2021.04.24 Sat

この度、TEZUKAYAMA GALLERY-VIEWINGにて西本剛己の関西での初個展「NEOLOGISM 21714-21743」を開催いたします。

西本は1988年に筑波大学大学院芸術研究科を修了後、アーティストとして制作活動を始めます。翌年に開催された初個展「NEOLOGISM/ネオロギズム」でのデビューから現在に至るまで、一貫したアプローチで制作を続けています。

哲学的思想からインスピレーションを受け、ビジュアル化する西本の作品は独創的な視点を内包する作品であるため、ある種難解にも感じますが、作品によって構成された空間は圧倒的な存在感を示し、鑑賞者の記憶に強く残ります。

今展の展覧会タイトルは、西本がアーティストとしてキャリアをスタートさせた1989年の個展と同じ「NEOLOGISM/ネオロギズム」です。NEOLOGISM(ネオロギズム)とは「教義の新解釈」あるいは「人がまゆをひそめるような新造語」を指す言葉であり、精神医学では分裂症(統合失調症)の患者にみられる「言語新作癖」にも当てはまります。「その不条理な行為は芸術の欲動と限りなく近い」と西本は言います。

昨今の世界を覆う不条理な状況を西本なりに解釈し作品に込めたメッセージを、鑑賞者も各々の視点から考察して頂ける機会になればと思います。

今展では、6mを超える巨大な立体作品など、新作を中心とした約10点の作品で構成した壮大なスケールでのインスタレーションを発表いたします。是非、この機会にご高覧下さいませ。


[アーティスト・ステートメント]

コロナウイルスが拡がり始め、あちこちの受付けやレジに飛沫防止シートが使われるようになったある日、人の動きやエアコンの風でわずかに揺れる、ビニルシートの反射を不思議に美しいと感じた。

このシートによって私たちはお互いに遮断されると同時に防護されており、声は聞きづらいが聞こえないわけではなく、相手は滲んで見えるが見えないわけではない。そして私と相手との間に、これまでの日常で見たことのない、揺らめく光の反射が出現する。今やそれがおよそあらゆる場所に発生している、この煩わしく不条理な日々の風景に、何か新しい未来、あるいは真実としての摂理を感じた。

芸術にとっての美とは、常に畏怖の念と表裏一体であるべきだ。いつもそんな風に考えている私にとって、日常がこれほど示唆に富むものに感じられたことはない。コロナ「禍」と感じながらも、自然界からの敬虔な「戒め」の声に耳を傾け、その意味を知りたがる自分がいる。

数年前まで、皆既日蝕をテーマにした作品を作っていた。太陽が月に隠されると、普段は目に見えない太陽のコロナが現れる。本物の皆既日蝕を観たときには、その銀色の輝きに足が震えた。コロナとは「王冠」のことだ。人智の及ばない状況にまつわる形態に人が名付けた、その同じ名に導かれるように、今回の作品たちが一つ一つ私の頭の中に現れ、私を動かして実在となった。

ネオロギズム(NEOLOGISM)とは「教義の新解釈」という意味の言葉だが、精神医学では分裂病(統合失調症)の患者にみられる「新語造語癖」のことを指す。その不条理な行為は芸術の欲動と限りなく近いように思われる。21714-21743という数字は、今回の個展会期の、私が生まれから経過した日数を示している。

西本剛己