勿体 − buttai −

勿体 − buttai −

大成哲

2021.05.21 Fri - 2021.06.19 Sat

この度、TEZUKAYAMA GALLERY-VIEWING ROOMにて大成哲の個展「勿体 – buttai -」を開催いたします。

1980年、東京生まれ。2004年、日本大学芸術学部美術学科彫刻コースを卒業。同年、東京藝術大学大学院に入学。2005年、チェコ政府奨学金を取得 しチェコ共和国、プラハへ留学。プラハ美術アカデミーとプラハ工芸美術大学に各1年ずつ在籍。2008年、東京藝術大学大学院修士課程を修了。その後 、再びチェコへと渡り、現在もプラハを拠点に活動。ガラス、石、木などの素材を用いた彫刻作品、インスタレーション作品を中心に精力的に発表してい ます。

大成は様々な素材を扱いながらも、「人の手が加わる事で物質が変化する際に起こる現象や関係性 」をテーマにこれまで作品制作を行ってきました。 その作品の多くは創造と破壊、結果と過程、作為と無作為…といった対比性を持って鑑賞者に提示されます。 2016年の個展で発表した作品「tear」は、チェコの伝統技術であるカットガラス(クリスタルカット)の技法を駆使しながらヒビを模して彫刻した模様(人 工美)と、瞬間的に発生するヒビ(自然美)の対比を一対二点のガラス彫刻で提示し、美の本質に迫ろうとする試みを展開しました。

約5年ぶりとなる今展では、世界各国のギャラリスト、キュレーター、アーティストの名刺を素材に、スグラフィットと呼ばるれるルネッサンス時代に編み出 されたグラフィックの技法を参照した彫刻作品「monos」を中心に発表します。幾何学模様にカットされた名刺は、彫刻の対象物として作為的に彫られた 部分とその行為によって無作為に生じた非対象物の2つに切り分けられますが、相似の型を成し、本質的には同価値である事を示唆しています。また、 彫刻という創造行為はある種の破壊行為と表裏一体の関係で成り立っているという事も鑑賞者に暗示しています。 今作はこれ迄にバーゼル、チェコで発表を重ねてきましたが、日本では初の展示となります。 是非、この機会にご高覧賜りますよう、お願い申し上げます。

 

[アーティスト・ステートメント]

私は人と自然環境の関係を、彫刻家と彫られる物体の関係と見立てています。その中で、もののあるべき様が人によって変えられていく姿や、その行為 から出来る副産物に視点を向けています。 物質、非物質であれ、人間に変化 “させられる” のであれば、輪廻的理論は理想であり、自然が持つエネルギーや生命は徐々に潰れていきます。私たち は創ることに我や欲が剥き出しの状態で、亡くなっていく勿体を弔う気持ちはどこへいったのでしょうか。 究極の理想は、この地球から人間、もちろん彫刻家も彫刻も無くなることだと思います。ですが、そのような極端な選択ではなく、なんとか私たちが今足り るものに有難身を持ち、全く取りこぼし残さず享受し、少しでも永く良い営みができることだと思っています。

大成 哲